◆ ギラン・バレー症候群とは
ギラン・バレー症候群は、ある日突然、身体の自由を奪います。昨日まで普通に歩いていたのに、朝目覚めたら足に力が入らない。やがて手が動かしづらくなり、症状が進行すると呼吸にさえ影響を及ぼすことがあります。原因は、免疫系が誤って自分の神経を攻撃してしまうこと。けれど、多くの人が適切な治療とリハビリによって回復を目指しています。
しかし、ただ身体を動かすだけでは、心はついてきません。そこで、アートが大きな力を発揮するのです。
◆ アートがリハビリに与える影響
◇ リハビリの一環としてのアート
リハビリと聞くと、単調な運動を繰り返すイメージが浮かぶかもしれません。でも、絵筆を握り、色を選び、キャンバスに向かうとき、そこには「自分の意思」があります。ギラン・バレー症候群のリハビリでは、細かな動作の回復が鍵を握ります。そのため、アートを取り入れることで、自然と指や腕を動かすトレーニングにつながるのです。
「リハビリだから頑張る」のではなく、「描きたいから動かす」。その違いが、回復への大きなモチベーションになります。
◇ 精神的なサポートとしてのアート
病気と向き合うことは、身体だけでなく、心にも大きな負担を与えます。「元の生活に戻れるのか」「この状態が続いたらどうしよう」――そんな不安の中にいるとき、言葉では表せない思いを色彩や形で表現することが、心の支えになります。
色彩療法では、明るい色を使うことで前向きな気持ちを引き出せるとされています。また、アートセラピーでは、創作を通してストレスを発散し、自己肯定感を取り戻すことができます。自分の内側にある感情をアートにのせることで、新たな一歩を踏み出せるのです。
◆ ギラン・バレー症候群の当事者によるアート作品
◇ デジタルアートの活用
「手が思うように動かなくなったら、絵を描くのは無理?」――そんなことはありません。現代のデジタルツールは、筆を持たなくても創作を可能にしてくれます。
タブレットや音声入力、さらには視線入力を活用したデジタルアートなら、身体の制限を超えた表現が可能です。指先がうまく動かせなくても、画面をタップするだけで作品を生み出すことができます。表現の自由を取り戻すことで、「まだできることがある」と実感できるのです。
◇ 展覧会やコミュニティの支援
一人で描くだけでなく、作品を誰かに見てもらうことで、創作の喜びはさらに広がります。近年では、ギラン・バレー症候群の当事者が制作したアートを展示する機会が増えています。
オンラインギャラリーや、障がい者アートの支援団体が主催する展覧会などを通じて、多くの人と作品を共有できるのです。社会とのつながりを取り戻し、「自分の表現が誰かに届く」ことを実感できる。それは、病と向き合う上での大きな支えになります。